京都で扇子を手にしたとき、
これを使うときには、京都の空気を少し思い出せそうだなと思いました。

その場の空気ごと、持ち帰れるような気がしたのです。

思わず購入した扇子

夫と京都を旅しているときに、「扇子を買いたい」と言われ、
扇子のお店を訪れることになりました。

白竹堂さんは、創業1718年の老舗でした。
落ち着いた雰囲気の店内にはさまざまな扇子が並び、
女性用の売り場は、色鮮やかで少し華やかな空気が流れていました。

買うつもりはなく、ただ眺めていたのですが、
少し小ぶりで、手に収まりのよい扇子が目に留まりました。

黄色いミモザがあしらわれていて、
あおぐと、やわらかな風が顔に当たります。

これを持ち帰って使えば、
京都で感じた空気を、ふと思い出せるかもしれない。
そんなふうに思いました。

帰ってからの使い心地

持ち帰り、箱を開けてみました。

京都で購入した扇子を箱から出した様子。木箱とミモザ柄の扇子、専用ケースが並ぶ
持ち帰った日のことを思い出します

広げてあおいでみると、
旅が終わってしまった寂しさが、
少しやわらいだような気がしました。

今では、暑い時期になると、
かばんにしのばせて使っています。

やわらかな風を感じると、
気持ちがふっとほどけるような感覚があります。

ミモザ柄の扇子を広げてあおぐ様子。やわらかな風を感じる日常のひととき
あおぐと、気持ちが少しほどけます

扇子を使っているとき、
京都で過ごした心地よい時間を、
ふと思い出すことがあります。

あおぎながら、次はどの神社や寺院に行こうか、
そんなことに思いを巡らせています。

日常の中に、ほんの少し、
やわらかな時間が増えたように感じています。

旅の空気を持ち帰る

これまで私は、旅先で感じる空気を、
その場で味わうことを大切にしてきました。

景色や仏像、絵画を眺めながら、
その場所に流れている時間や空気を感じること。

それは、その場にいるからこそ
出会えるものだと思っていました。

でも、扇子を持ち帰ってみて、
日常の中にも、ほんの少しだけ
あのときの空気が重なるような瞬間があると気づきました。

その場にいなくても、
ふとしたきっかけで思い出せることがあるのだと。

それ以来、京都を訪れると、
その土地らしい何かを、
ひとつ持ち帰るようになりました。

使っていると、
忙しい日常の中でも、気持ちが少し落ち着き、
ほんの少し前を向けるような気がします。

ミモザ柄の扇子とケースを机の上に置いた様子。日常の中で落ち着く時間を感じるひととき
机上にある扇子。目に入ると、少し落ち着きます

また行こう。
それまで、もう少し頑張ってみよう。

そんなふうに思える時間が、
日常の中に増えていきました。

旅の空気を持ち帰ることも、
旅のひとつのかたちなのかもしれません。

ちびくま

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